農と食のこと

管内の農産物

広島菜

 1597年頃、観音村(現・広島市西区)の住人が京都からミブナに類似した種子を導入し、その後改良されたという説や、明治25年に川内村(現・広島市安佐南区)の木原佐市氏が京都から種を持ち帰り、その後、在来種と交配改良したという説があります。現在でも地元産地では、京菜、又は平茎菜とも呼ばれています。
 主に漬物加工として利用され、その「広島菜漬」は繊維が少なくやわらかで歯切れよく、特有の香りとピリッとした風味が特徴です。

祇園パセリ

 戦前、広島市内では主に西区で栽培されていたパセリですが、終戦後需要が増加し、昭和25年頃より市内の近隣地である祇園町(現・広島市安佐南区祇園地区)で栽培が始まりました。その後、昭和40年に吉島地区で選別された系統を受け継ぎ、従来のものと比べてきざみの細かいパセリが作られるようになりました。露地、ハウスで一年中収穫される祇園パセリは、葉が細かくちぢれて、肉厚で柔らかく、緑色が濃いのが特徴です。

矢賀チシャ

 矢賀チシャは東区矢賀の飯田森一さんが種を保存していたもので、赤みが強く、ちぢれてほどよい苦味があるのが特徴です。チシャは茎や葉を折ると乳状の液が出ることから東西共通に乳草と呼ばれ、転じた古名「知佐(チサ)」が訛ってチシャになったのが平安時代末期だというから、歴史のある野菜として親しまれています。

笹木三月子大根

 安佐南区長楽寺の笹木憲治さんが、昭和36年から晩生の丸だいこんを作ろうと、2種類の大根「三月子(さんがつこ)」と「聖護院(しょうごいん)」の交配を始め昭和50年誕生しました。耐寒性が強く、他の品種が少ない初春に取れる細長い三月子の特徴と、甘くて肉質が密で、煮崩れしにくい聖護院の特徴を併せ持っています。また形は聖護院に似た楕円で、大きいもので2キロにもなります。笹木三月子大根は、肉質が緻密で、煮崩れが少ないため、おでん等に最適です。

小河原おくら(広島おくら)

 広島伝統野菜の一つであり、安佐北区小河原町の農家が自家採種で守り続けている独自のオクラです。一般的な5角形のオクラと比べると、小河原おくらの切り口は8~9角形。実は大きく、緑色がやや薄くて肉厚、軟らかくて粘りが強いのが特徴です。ウブ毛が少ないので、塩ずりする必要がなく、天ぷら、酢の物、煮物はもちろん、生でも食べることができます。オクラは、βーカロテン、ビタミンB1、C、Eに富んでいて、栄養面でも優れた健康野菜です。

祇園坊柿

 豊かな果肉とさっぱりした上品な味が特徴です。祇園坊柿は、形がこれを広めたといわれる佐東郡祇園(現・広島市安佐南区の安神社)の社僧の丸い頭に似ていることから呼ばれるようになったといわれています。表年(良作の年)、裏年(不作の年)によって収穫量が増減します。最近は、長く鮮度を保てるよう、真空パックにした「あおし柿(脱渋柿)」も販売しています。

豊平ピーマン

 ほどよい苦味で風味ある昔ながらの味がする豊平ピーマン。昭和48年、北広島町豊平地区でピーマン栽培が始まり、昼夜の寒暖の差が大きい気象条件で、色も鮮やかで質の良いピーマンが育ちます6月下旬から11月上旬まで長期にわたり収穫できます。また、1本の樹から約250個収穫できるのもピーマンの大きな特徴の一つです。

古江いちじく

 温暖で南向きの斜面が多い西区古江地区は、イチジク栽培に向いた土地で、大正の初めごろから栽培が始まり、約100年続いています。古江イチジクの品種は地域に合っているという「蓬莱柿」で、皮が薄くて甘味が強いのが特徴。8月の終わりごろから実が熟しはじめ、9~10月にかけて食べ頃です。瀬戸の潮風に吹かれて育つ古江のイチジクは、その味と香りを心待ちにしている人も多く、季節を感じさせてくれるうれしいふるさとの産品で、贈答品としても喜ばれています。

芸北トマト

 標高約600mに位置する芸北地区で、昼と夜の温度差が10℃以上という高冷地ならではの気候条件を利用し、トマトのうま味を最大限に引き出している色鮮やかで爽やかな甘みのある芸北トマト。この気候条件に適している数ある「桃太郎」品種の中でも、特に実が大きく、甘みが強くて熟しても果肉が崩れないのが特徴です。また、雨の多い地域のため、以前は病気・害虫などの被害がありましたが、昭和49年の雨除け栽培技術導入により、品質が向上し生産量も急増しました。

芸北りんご

 山間部の冷涼な気候を利用した栽培で、北広島町芸北地区の特産になっている芸北りんご。栽培を始めて約30年になります。品種はふじ、シナノスイート、つがる、ジョナゴールド、あかぎ、千秋、秋映、王林など数多く栽培され、出荷は9月初旬から2月頃まで続きます。芸北地区には、リンゴの無人販売所も設置されており、山登りや紅葉狩りに来た観光客などにも人気があります。

中筋しゅんぎく

 白和え・おひたし・鍋物など日本料理には欠かせないシュンギク。口にするとふわっとひろがる菊の香りで独特の風味がします。広島市内では安佐南区の中筋・東野・西原地区が主な産地で、広島市場の約8割の出荷量を誇ります。年中出回っていますが、秋から春にかけてが旬。柔らかくておいしいのもこの時期です。自家採種で育てられている中筋のシュンギクは、作る家によって葉型が微妙に違っています。

観音ねぎ

 普通の葉ねぎより白色の部分がやや多く、特有の香りや風味、そして非常に柔らかいのが特徴の観音ねぎ。明治の初めに京都から九条ねぎの種を持ち帰り、その後西区の観音地区で改良が重ねられたのでこの名がつきました。観音地区の地質は太田川の砂が蓄積した土地なので、ネギの栽培には好条件。最近では一年中店頭に並ぶ観音ねぎですが、秋~冬が一段とおいしくなる時期。ワラで束ねてあるのが観音ねぎの目印です。